財団法人神奈川科学技術アカデミー

 ホームイノベーションセンター研究事業のご紹介> 「光触媒」グループ

「光触媒」グループ(材料グループ)

  酸化チタン光触媒および光機能材料に関する基礎および応用研究、また企業との共同研究や国家プロジェクト等に取り組み、光触媒技術の向上・発展を目指しています。また、光触媒オープンラボや光触媒ミュージアムを運営し、光触媒の普及・啓蒙に努めています。

「光触媒」グループ(材料グループ)の論文が、カナダのリサーチ会社Advances in Engineering社のサイトで紹介されました
The Second International Symposium on Energy and Environmental Photocatalytic Materials (EEPM2、4月1~4日)で、落合剛研究員及び藤嶋昭室長の研究成果について、落合剛研究員が招待講演を行いました。
題目:「Effective Design for Environmental and Medical Application of TiO2 Photocatalysts and Boron-doped Diamond Electrodes」

実用化実証室長グループリーダー

プロジェクトリーダー 藤嶋 昭藤嶋 昭


東京理科大学 学長

研究体制

期 間
2005年4月~
構 成

グループリーダー
常勤研究員
非常勤研究員
研究補助員

実施場所
かながわサイエンスパーク(KSP)
神奈川県川崎市高津区
坂戸3-2-1 東棟4F

研究員一覧

研究概要 (H24年7月)pdfアイコン

中間評価報告書

♠ 第1回中間評価 (PDF 115KB)pdfアイコン
♠ 第2回中間評価 (PDF 588KB)pdfアイコン
♠ 第3回中間評価 (PDF 66KB)pdfアイコン
♠ 第4回中間評価 (PDF 288KB)pdfアイコン
♠ 第5回中間評価 (PDF 328KB)pdfアイコン

研究状況(PDF 418KB)pdfアイコン

中田 一弥 研究員が平成24年度 『電気化学会 進歩賞・佐野賞』を受賞しました!

落合 剛 サブリーダー・常勤研究員が平成26年度 『電気化学会 進歩賞・佐野賞』を受賞しました!

共同研究先のユーヴィックス株式会社の森戸祐幸社長が『発明大賞 東京都知事賞』を受賞!

「光触媒」グループ(材料グループ)の論文が、カナダのリサーチ会社Advances in Engineering社のサイトで紹介されました

概要

  光触媒関連技術は我が国のオリジナルであり、酸化チタンに紫外光を照射すると水が酸素と水素に分解する本多・藤嶋効果の発見以来、実に40年以上にわたって研究開発が続けられています1-4。建材や浄化機器、生活用品に至るまで幅広く応用されていながら、光誘起超親水化メカニズムの解明や高効率な可視光応答光触媒の創出など、学術的な追究の余地も多く、現在最も魅力的な研究テーマのひとつです。一方、本来絶縁体であるダイヤモンドにホウ素をドープした導電性ダイヤモンド (Boron-Doped Diamond, BDD) 電極も、センシングデバイスや高耐久性電極としての応用が期待されている新しい材料です。とくにBDD電極を陽極として用いた場合、水の電解によって、オゾンやOHラジカルなどの強力な酸化剤が生成することが知られています。つまり、有機物によって高度に汚染された水でも、BDD電極表面での有機物の直接酸化と、生成した酸化剤による間接酸化によって、効率よく浄化することができます5, 6。これら2つの機能材料について、環境浄化や医療分野への応用展開を目的とし、研究開発をすすめています。

研究の詳細

光触媒フィルタ, TMiPTM (titanium mesh impregnated photocatalyst)

  酸化チタン光触媒は,一般的に数nm~数十nmの径をもつ微粒子の状態で存在しており,そのまま空気や水の浄化に用いると,処理後に濾過等で酸化チタン微粒子を除去しなくてはなりません。したがって,実用性の観点から,酸化チタン微粒子を基材表面に固定化して光触媒フィルタとし,これを紫外光源と組み合わせて空気および水の浄化に供する方法が用いられています。たとえば空気清浄機の場合,プレフィルタ,光触媒フィルタ,紫外光源,ファンを組み込んだ構造になっており,室内の有害物質や微生物などは,ファンで取り込まれて光触媒フィルタ表面に吸着し,紫外光照射による光触媒反応で酸化分解されます。HEPAフィルタや活性炭フィルタなどと異なり,光触媒フィルタは煩雑な再生処理や交換を基本的に必要とせず,半永久的に使用できます。我々は,ユーヴィックス株式会社と共同で,チタンメッシュ基材表面に酸化チタン微粒子を焼き付けた新奇光触媒フィルタTMiPTMを開発しました(図1)7。この光触媒フィルタの利点として、酸化チタン微粒子をチタン表面に焼き付けることで、高い密着力が得られていること,また,従来のセラミックフィルタと違って展性・延性に富む金属の多孔質薄膜を用いているため,自由に加工して紫外光照射領域の確保および気流・水流の設計が容易であること,さらに,セラミックフィルタより軽く,強度もあり,かつ低コストとなることがあげられます。加えて,プラズマ処理やオゾン処理でも破壊されません。現在,このTMiPを組み込んだ諸種の環境浄化ユニットを作製中です7-16 (図2). なかでも、プラズマ処理と組み合わせた空気清浄機について、次項に紹介します。

 

プラズマ処理と光触媒反応の相乗効果を利用した喫煙室用空気清浄機17

  インパクトワールド株式会社と共同で、プラズマ処理とTMiPとを組み合わせた構造の空気浄化ユニットを作製しました(図3a)17。プラズマ発生デバイス内に、TMiPを波状に配置することで、プラズマからの紫外線照射による光触媒反応と、プラズマ自身による化学結合の切断やオゾン生成による反応の相乗効果が期待できます。このユニットを組み込んだ空気清浄機(図3b)を試作し、実際の喫煙室を模した空間での評価(図3c)を実施しました。その結果、アンモニア、アセトアルデヒド、酢酸、ニコチン、トルエン、パラジクロロベンゼン、オルトキシレン等の臭気ガス成分等について、ワンパス条件でほぼ無臭にできることがわかりました(図4)。たばこの煙には、粉塵とガスがふくまれます。粉塵はHEPAフィルタの通風で除去が可能ですが、ガスは、2000種類を超える化学物質が含まれると報告され、特にアンモニア、酢酸、アセトアルデヒド等の臭気ガス成分は、従来の空気清浄機では除去が困難でした。これまでも、光触媒やプラズマ発生装置を単独で組み込んだ空気清浄機は製品化されてきましたが、臭気ガス成分の除去に関しては、分煙を可能とし得るまでの性能を持つ製品は、業務用・家庭用ともにありませんでした。この成果は、そうした課題が克服可能であることを示すとともに、空気清浄機内を1度だけ通す「ワンパス法」によるデータを学術的に示している点において、実用性の高い空気清浄機評価方法をも提示しています。KASTを所管する神奈川県は、独自の受動喫煙防止条例を制定し、日本で最も厳しい分煙対策を事業者に求めています。今回開発に成功した空気清浄機を活用することで、これまで、たばこの煙を嫌う非喫煙者が避けていた環境、例えば、飲食店、パチンコ店、カラオケボックス、雀荘等で、新たな需要の開拓が可能となり、サービス産業の活性化が期待できます。

 

BDDマイクロ電極を用いたピンポイントオゾン生成ユニットの研究開発と歯科治療への応用18

  BDDマイクロ電極は、タングステンのマイクロワイヤ表面に化学的気相合成法でBDD薄膜を形成させたもので、高感度in vivoセンサとしての可能性を秘めた機能材料です19, 20。そしてBDD電極は、前述のとおり、広い電位窓を有することで、水を電解して効率的にオゾンなどの酸化剤を生成し、殺菌等に用いることができます21。我々は、それらの知見をもとに、BDDマイクロ電極を用いたピンポイントオゾン生成ユニットを創出し、その歯科治療への応用を進めています18。これを用いて小型オゾン生成ユニットを作製すれば、歯科医療における根管治療などへの応用が期待できます。従来の根管治療は、細長い器具を用いて物理的に腐蝕組織を除去する方法がとられており、細菌叢の残存による炎症や齲蝕の発生が問題となっています。本研究では、まず直径0.5 mmのBDDマイクロ電極を作製し、これにイオン交換膜を介してアルミニウム薄膜を巻きつけました(図5)。この構造にすることで、以下の式および図5に示したように、純水中でも、イオン交換膜を介した水の電気分解が起こり、小型オゾン生成ユニットの近傍にのみオゾン等の酸化剤が生成します。

anode (BDD): 3H2O → O3 + 6H+ + 6e-
cathode (Al): 6H+ + 6e- → 3H2

 

  これを、細菌のバイオフィルムを形成させた牛歯の根管中に挿入し、in vitroでの殺菌効果を評価しました。牛歯根管内に歯周病菌(Porphyromonas gingivalis) のバイオフィルムを形成させ、リン酸緩衝生理食塩水を根管中に0.05 – 0.1 mL 注入し、生体内に近い状態に調整しました。そこにピンポイント電解ユニットを挿入して所定時間電解した後、根管内を洗浄し、洗浄液中の細菌の生死を蛍光色素で判定したところ、従来法である次亜塩素酸ナトリウム水溶液処理と同等の殺菌効果を示しました。この電解ユニットは、従来法に比較して、より局所的に高濃度の活性酸素種を生成できるため、今後、より効果的でQOLの高い歯科医療の実現にむけた応用展開が期待できます。

まとめ

  酸化チタン光触媒の環境浄化への応用可能性を、新奇光触媒フィルタTMiPの研究開発成果を例にして述べました。光触媒フィルタTMiPの、軽量でフレキシブルという特性は、浄化ユニットの設計自由度を飛躍的に高め、これまで困難であった小型で効率的な浄化機器の創製や、他の浄化方法とのハイブリッドなどを可能にしました。また、BDD電極の応用についても、ピンポイントオゾン生成ユニットの研究開発成果を例にして、効率的なオゾン生成方法の確立と、その殺菌・水浄化への応用について述べました。オゾンは最終的に酸素と水に分解するため、残留性の少ない殺菌方法として有効であるといえます。 光触媒製品の事業規模推移をみると、2009年度から急激に浄化機器分野の規模が増加しています。これは、新型インフルエンザの流行など、環境リスクの深刻化に伴う需要の増加によると考えられます。こうした状況をふまえ、今後もとくに環境浄化・医療分野への応用研究を重点的に継続していきます22。その研究成果をもとに、関連分野の企業や大学と連携し、具体的な実用化・製品化を目指します。共同研究等の御相談、お待ちしています!
 

参考文献

1. A. Fujishima, and K. Honda, Nature, 238, 37 (1972).

2. S. N. Frank, and A. J. Bard, Journal of the American Chemical Society, 99, 303 (1977).

3. K. Sunada, Y. Kikuchi, K. Hashimoto, and A. Fujishima, Environmental Science & Technology, 32, 726 (1998).

4. J. Mo, Y. Zhang, Q. Xu, J. J. Lamson, and R. Zhao, Atmospheric Environment, 43, 2229 (2009).

5. Y. Einaga, in Comprehensive Hard Materials, ed. V. K. Sarin, Elsevier, Oxford, 2014, pp. 493.

6. C. Comninellis, I. Duo, P.-A. Michaud, B. Marselli, and S.-M. Park, in Diamond Electrochemistry, eds. A. Fujishima, Y. Einaga, T. N. Rao and D. A. Tryk, Elsevier B.V.-BKC, Amsterdam-Tokyo, 2005, pp. 449.

7. T. Ochiai, T. Hoshi, H. Slimen, K. Nakata, T. Murakami, H. Tatejima, Y. Koide, A. Houas, T. Horie, Y. Morito, and A. Fujishima, Catalysis Science & Technology, 1, 1324 (2011).

8. T. Ochiai, K. Nakata, T. Murakami, Y. Morito, S. Hosokawa, and A. Fujishima, Electrochemistry, 79, 838 (2011).

9. T. Ochiai, Y. Niitsu, G. Kobayashi, M. Kurano, I. Serizawa, K. Horio, K. Nakata, T. Murakami, Y. Morito, and A. Fujishima, Catalysis Science & Technology, 1, 1328 (2011).

10. T. Ochiai, H. Nanba, T. Nakagawa, K. Masuko, K. Nakata, T. Murakami, R. Nakano, M. Hara, Y. Koide, T. Suzuki, M. Ikekita, Y. Morito, and A. Fujishima, Catalysis Science & Technology, 2, 76 (2012).

11. H. Slimen, T. Ochiai, K. Nakata, T. Murakami, A. Houas, Y. Morito, and A. Fujishima, Industrial & Engineering Chemistry Research, 51, 587 (2012).

12. A. Fujishima, K. Nakata, T. Ochiai, A. Manivannan, and D. A. Tryk, Interface, 22, 51 (2013).

13. T. Ochiai, K. Masuko, S. Tago, R. Nakano, K. Nakata, M. Hara, Y. Nojima, T. Suzuki, M. Ikekita, Y. Morito, and A. Fujishima, Water, 5, 1101 (2013).

14. T. Ochiai, K. Masuko, S. Tago, R. Nakano, Y. Niitsu, G. Kobayashi, K. Horio, K. Nakata, T. Murakami, M. Hara, Y. Nojima, M. Kurano, I. Serizawa, T. Suzuki, M. Ikekita, Y. Morito, and A. Fujishima, Chemical Engineering Journal, 218, 327 (2013).

15. T. Ochiai, and A. Fujishima, in Encyclopedia of Applied Electrochemistry, eds. G. Kreysa, K.-i. Ota and R. Savinell, Springer New York, 2014, pp. 1542.

16. T. Ochiai, Y. Hayashi, E. Ichihashi, T. Machida, Y. Uchida, S. Tago, Y. Morito, and A. Fujishima, American Journal of Analytical Chemistry, 5, 467 (2014).

17. T. Ochiai, Y. Hayashi, M. Ito, K. Nakata, T. Murakami, Y. Morito, and A. Fujishima, Chemical Engineering Journal, 209, 313 (2012).

18. T. Ochiai, Y. Ishii, S. Tago, M. Hara, T. Sato, K. Hirota, K. Nakata, T. Murakami, Y. Einaga, and A. Fujishima, ChemPhysChem, 14, 2094 (2013).

19. K. Arihara, C. Terashima, and A. Fujishima, Electrochemical and Solid State Letters, 9, D17 (2006).

20. S. G. Park, G. S. Kim, J. E. Park, Y. Einaga, and A. Fujishima, Journal of New Materials for Electrochemical Systems, 8, 65 (2005).

21. Y. Yao, Y. Kubota, T. Murakami, T. Ochiai, H. Ishiguro, K. Nakata, and A. Fujishima, Journal of Water and Health, 9, 534 (2011).

22. T. Ochiai, Electrochemistry, 82, 720 (2014).

光触媒グループ
TEL:044-819-2040 FAX:044-819-2070

 前のページへ戻る    ページのトップへ戻る