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「透明機能材料」グループ

-新奇な光・磁気材料の開発を目指した、長谷川「ナノ光磁気デバイス」プロジェクトの研究成果を発展させ、実用化を目指す。-

  新しい機能を備えた透明材料や同材料を用いたデバイスの開発に取り組んでいます。特に、二酸化チタン系透明導電体の実用化に重点的に取り組んでいます。同材料は、液晶ディスプレイなどの電極として広く使われている「ITO」という物質に取って代わる可能性を秘めており、社会的にも大きな注目を集めています。

 中尾祥一郎、廣瀬靖研究員及び長谷川哲也GLらの研究成果が、「Adv.Mater」に掲載されました。
論文タイトル:「Indium-free Inverted Organic Solar Cells Using Niobium-doped Titanium Oxide with Integrated Dual Function of Transparent Electrode and Electron Transport Layer」
 中尾祥一郎、廣瀬靖研究員及び長谷川哲也GLらの研究成果が、「Journal of Semiconductors」に掲載されました。
論文タイトル:「Effects of reductive annealing on insulating polycrystalline thin films of Nb-doped anatase Ti02: recovery of high conductivity」
The 2015 E-MRS(European Materials Research Society) Spring Meeting(5月2~6日)で、中尾祥一郎、廣瀬靖研究員及び長谷川哲也GLらが研究成果の発表を行いました。
題目:「Fabrication of Nb-doped anatase, TiO2 transparent conductive thin films by two-step annealing with widened process window」
「Towards Indium-free oxide semiconductors: TiO2-based transparent conductors and mixed anion amorphous semiconductors」

第63回応用物理学会春季学術講演会(3月19~22日)で、廣瀬靖、中尾祥一郎、一杉太郎、鈴木温研究員及び長谷川哲也GLらが研究成果の発表を行いました。
題目:「ペロブスカイト型SrNbO2N エピタキシャル薄膜の巨大正磁気抵抗」
「耐熱性TNO 透明導電膜の導入による色素増感太陽電池の高効率化」
「ソフト化学的Li挿入によるアナターゼ型TaONへのキャリアドープ」

♦TNO(Nb:TiO2)透明導電基板等のサンプル提供、共同研究等、お気軽にご相談ください。

お問合せはこちら  str@newkast.or.jp

研究概要

  透明機能材料グループでは、長谷川「ナノ光磁気デバイス」プロジェクト(平成15年度~20年度)において独自に開発した透明機能性材料を、実用化するための技術開発を進めています。

  上記プロジェクトにおいて、ニオブ(Nb)を数%程度添加したアナターゼ型二酸化チタン(TNO)が、10-4 Ωcm台の低い電気抵抗率と高い透明性を有することを見出しました。透明性と導電性を同時に示す透明導電体は、フラットパネルディスプレイなど光を扱うデバイスには不可欠な材料であり、現在、スズを添加した酸化インジウム(ITO)が実用的に用いられています。しかし、ITOは主成分であるインジウムが希少元素であり、供給に不安があることから、代替材料の開発が強く求められています。
  本グループでは、安価で無害なチタン(Ti)を主成分とするTNOをITO代替材料として確立すべく、実用法であり大面積成膜に適したスパッタリング法を用い、良好な透明導電性を有するTNO膜の作製を行っています。

お知らせ

2014年5月19日
科学技術振興機構(JST)、東京大学と共同で記者発表を行いました。
(科学技術振興機構記者発表へのリンク)

♦ 文部科学省
「元素戦略プロジェクト」委託事業 :
ITO代替としてのニ酸化チタン系
透明電極材料の開発
(別ウィンドウで開きます)

♦ 東京大学 長谷川研究室
(別ウィンドウで開きます)

研究体制

期 間
2008年10月~
構 成

グループリーダー
常勤研究員
非常勤研究員
研究補助員
事務補助員

実施場所
かながわサイエンスパーク(KSP)
神奈川県川崎市高津区
坂戸3-2-1 東棟409

研究員一覧

研究概要 (H24年7月)pdfアイコン

中間評価報告書

♠ 第1回中間評価 (PDF 619KB)pdfアイコン
♠ 第2回中間評価 (PDF 460KB)pdfアイコン
♠ 第3回中間評価 (PDF 576KB)pdfアイコン    

研究状況(PDF 428KB)pdfアイコン


(左)基板、(右)ニオブ添加ニ酸化チタン薄膜

二酸化チタン系透明導電膜の電気抵抗

  TNOは、屈折率が高い、赤外領域での透明性が高いなど、ITOには見られない性質を持ち合わせています。このTNOに特有の性質を利用し、透明導電体として新たな応用領域の開発も目指しています。なお、TNOの実用化を目指した研究は、文部科学省元素戦略プロジェクト(平成19年度~)(別ウィンドウで開きます)に採択されました。
  本グループでは、導電性以外にも、新たな機能を備えた透明な材料の開拓に取り組んでいます。例えば、コバルトや鉄を添加した二酸化チタンは、室温透明強磁性体であり、可視領域で非常に大きな磁気光学効果を示します。このような性質を利用し、光アイソレータなど、スピントロニクス用のデバイスを提案・作製することも、本グループのねらいの一つです。

研究内容 1.二酸化チタン系透明導電膜 2.高移動度透明電動膜
3.新奇な電子機能材料の開発  
研究設備 パルスレーザー蒸着装置1号機 パルスレーザー蒸着装置2号機
スパッタ成膜装置 XRD
MPMS 電極作成設備
その他の装置  
業績リスト 準備中:正式な物が完成するまではこちらを御参照下さい。 こちらを御参照下さい。
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研究内容

  透明機能材料グループでは、二酸化チタンなどの透明材料を母体とし、これに化学置換やナノ構造導入などにより新たな特性を付加することで、新奇な透明機能材料の開発を行っています。材料の合成には、パルスレーザー蒸着(PLD)法やスパッタリング法などの各種薄膜合成法を駆使します。二酸化チタン系透明導電体や透明磁性体など、世界的に見ても先端的な成果を数多くあげています。

スパッタリングによる成膜風景

1) 二酸化チタン系透明導電体の実用化

   ニオブ添加二酸化チタン(TNO)をITO代替透明導電体として実用化することを目指し、スパッタリングにより、ガラスやプラスチック基板上へTNO薄膜を形成するためのプロセスを開発しています。また、高屈折率などTNOが示すユニークな特性を利用し、LED用電極など、新たな応用範囲の開拓も行っています。一方で、透明導電メカニズムを解明するための基礎研究も同時に進めています。本研究は、文部科学省元素戦略プロジェクトの支援の下、企業、大学と連携しながら実施しています。

二酸化チタン系多結晶薄膜の偏光顕微鏡写真

2) 透明磁性体のデバイス応用

   二酸化チタンに微量の磁性元素を添加すると、伝導電子や酸素欠損が磁性元素と相互作用する結果、透明性を保ちながら室温強磁性が出現します。伝導電子のスピン分極や、バンド端近傍での巨大な磁気光学効果を利用することで、スピントロニクス用のデバイスを構築できます。本グループでは、高品位な透明磁性半導体薄膜を合成し、これを他の材料と積層することでデバイス応用を目指します。

デバイスの特性評価

3) 新奇な透明材料の開発

   PLD法を用い、マルチフェロイック物性、RRAM特性、蛍光など、新たな機能を有する透明薄膜材料の開発を行います。PLDでは、準安定相を合成できるほか、基板による格子ひずみの導入、人工超格子など、薄膜ならではの技法を用いることで、新奇な機能の発現を目指します。
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研究内容(1-1) 二酸化チタン系透明導電膜

1) 「背景」

 透明性と導電性を同時に示す透明導電体は、フラットパネルディスプレイや太陽電池など光を扱うデバイスには不可欠な材料です。現在はスズを添加した酸化インジウム(ITO)が産業的に用いられていますが、主成分のインジウムは希少元素のため供給に不安があるとされています。

 本グループでは、安価で無害なチタン(Ti)の酸化物にニオブ(Nb)を数%添加したアナターゼ型二酸化チタン(TNO)が透明導電体となる事を2005年に発見しました。現在は、TNOをITOの代替材料として用いるための研究を行なっています。

(図1) 透明なSrTiO3基板上に成膜したTNO (左):TNO薄膜、(右):基板のみ

2) 「二酸化チタンとは」

 二酸化チタンは古くから白色塗料や化粧品のファンデーション、光学薄膜などに広く使われており、自然界に豊富に存在する安全な材料です。また最近では、光触媒や色素増感太陽電池の材料などとしても応用が進められています。
 二酸化チタンの代表的な結晶構造には図2のようにアナターゼ型とルチル型の2種類がありますが、透明導電体となるのはこのうちアナターゼ型だけです。アナターゼ型の構造には異方性があり、ab軸に比べてc軸方向は有効質量が数倍大きく電気が流れにくいという特徴があります。このため、電気抵抗の低いTNO薄膜を作るためには結晶の成長方向を制御することが重要となってきます。

(図2) 二酸化チタンの結晶構造 左:アナターゼ型、右:ルチル型

3) 「電気を流す性質」

 純粋な二酸化チタンは電気を流さない絶縁体ですが、そのチタン(Ti)を3-6%ほどニオブ(Nb)で置換すると、電気抵抗率は10-4cm台前半まで急減し、電気伝導性を示すようになります。これは、4価のTiを5価のNbで置き換えることによってNbがドナーとなって電子を供給し、この電子が結晶中を自由に動き回るためです。NbをTiに対して1%以上加えるとキャリアは縮退し、金属的な電気伝導性に変化します。この際に100%近いNbが活性化している事がITOなど他の透明導電体との大きな違いです。 (図3) Nb添加量の異なるTNOにおける電気抵抗率の温度依存性 左:アナターゼ型、右:ルチル型

4) 「光を通す透明性」

  一般的に、電気を流す導電体は金属のように光を通しにくい物質がその多くを占めます。その原因の一つとして、電気伝導を担うキャリア電子が光の吸収を引き起こす事が挙げられます。この吸収の波長はプラズマ波長と呼ばれ、次の式で表されます。
  アナターゼ型二酸化チタンは誘電率∞が高いため、TNOのは長波長側の赤外域に位置し、可視光を透過させる事ができます。また、Nbを加えた際にバンドギャップ内に不純物準位は形成されていません。
  現在、TNOでは可視光に対して内部透過率が95%以上という優れた値を示しています。

5) 「実用化に向けた展開」

  当初はパルスレーザー堆積法によってTNOを成膜していましたが、現在では大面積の薄膜を作れるスパッタリング法でも透明導電性を持つTNOを成膜できるようになりました。室温で成膜したTNOを後からアニール(=熱処理)して結晶化させることにより、電気抵抗率は10-4cm台となっています。

  さらに、結晶方向をそろえにくいガラスの上でも電気抵抗の低いTNOを成膜するために、成長の核となるナノシートを事前に塗布する事で3.4×10-4cmという値を実現しました。結晶化プロセスの低温化についても検討を行ない、酸素の供給量を2段階に分けて制御することによって250℃でTNOを結晶化させ、ポリイミドフィルム上にTNO薄膜を作製する事に成功しています(図4)。
  また、光の屈折率がITOの約2.0に対してTNOは約2.4と高いという特長があり、同じく高屈折率のため光学的な相性の良い化合物半導体を用いたLEDの透明電極として実用化の研究を行ない、デバイスの試作などを行なっています
(図4) ポリイミド上に成膜したTNO
関連文献
1. 山田直臣, 一杉太郎, 長谷川哲也『二酸化チタン系透明電極材料の開発』セラミックス、44(5), P. 360-364, 2009
2. Y. Furubayashi et al., “A transparent metal: Nb-doped anatase TiO2”, Appl. Phys. Lett., 86, 252101 (2005) http://dx.doi.org/10.1063/1.949728
3. Y. Furubayashi et al., “Transport properties of d-electron-based transparent conducting oxide: Anatase Ti1−xNbxO2” J. Appl. Phys., 101, 093705 (2007) http://dx.doi.org/10.1063/1.2721748
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赤外まで透明な透明導電膜の開発

  光には目に見えない光があります。その一つが、可視光より波長の長い赤外光です。赤外光は特に太陽光線に可視光とほぼ同程度含まれる事から、近年、この赤外光を太陽電池に利用しようという研究が盛んに行われています。一つの例としてはこちらをごらんください。

  太陽電池にはセル内に光を損失なく導くために、透明電極が必須です。 “透明”導電膜は人間が見える光(可視光)に対して透明です。しかしながら多くの透明導電膜は赤外光に対して透明ではありません。これは今までの透明導電膜が可視光に対してだけ透明なように設計・開発されてきたからです。今後、太陽電池開発の進展すすむと、この”従来型”の透明導電膜ではまったく不十分になる可能性があります。

   以上のような状況のもと、我々は二酸化チタン系透明導電膜で蓄積した知見を元に、赤外まで透明な透明導電膜を開発する事に成功しました。用いた材料は最も古くから知られている透明導電膜(ネサガラス)である酸化スズです。酸化スズは(1)資源的に豊富であり低コスト、(2)還元および酸化雰囲気の耐性に優れ様々な太陽電池作製プロセスで使用可能、(3)変換効率向上に大きく寄与できるテクスチャ構造と呼ばれる表面構造が作製可能、という太陽電池電極に好適な材料です。しかしながら赤外まで透明な酸化スズを作製する事はこれまで不可能でした。

   赤外まで透明にする為には移動度の向上が必要な事が良く知られています。我々は酸化スズ単結晶薄膜が多結晶薄膜に比べて移動度が優れている事実に着目し、ガラス基板上に擬似単結晶である高配向薄膜を作製する事を着想しました。そのような薄膜の作製手法として、二酸化チタン系透明導電膜で知見を蓄積していたシード層(成長制御層)法を採用し、パルスレーザー蒸着法を用いて精力的なシード層の探索を行いました。その結果、幾つかの有効なシード層を見出しましたが、その中でもアナターゼ型二酸化チタンが最も有効であり、移動度80 cm2V-1s-1以上を達成する事に世界で初めて成功しました。
  図(a)はアナターゼ型二酸化チタンシード層の酸化スズ薄膜の構造に与える効果を示しています。なおドーパントとして微量のタンタルが添加されています。ガラス基板上ではランダム配向の多結晶薄膜であるのに対し、シード層を設けると(100)成長の配向成長が起きています。断面透過型電子顕微鏡観察(図(b))から、配向成長の結果、移動度を抑制する広角粒界が減少していることが分かりました。そして最適なドーパント組成において移動度80 cm2V-1s-1以上を得ることが出来ました。この値は酸化スズ薄膜としては過去最高であり、また次世代太陽電池電極に要求される基準値をクリアしています。
  この高移動度酸化スズ薄膜の透過率を、代表的な透明導電膜であるITO(移動度40 cm2V-1s-1)と比較してみます。なおシート抵抗は太陽電池電極の要求値(10Ω/□)に揃えており、透過率はガラス基板を含んだ値です。ITOは波長1000 nm付近の赤外領域において透過率の減少が見られます。その一方、高移動度酸化スズ薄膜は赤外領域においても高い透過率を維持し、波長1850 nmまで透過率70%以上でした。これらの結果から高移動度酸化スズ薄膜が低いシート抵抗と高い赤外透明性を兼ね備えており、次世代太陽電池用途に非常に有望であることが示されました。なお実用にはスパッタ法による大面積化が重要になりますが、既にスパッタ法でも移動度の改善が可能な事が分かっています。現在、国からの研究支援を受けながら、さらなる高移動度化実用プロセス化を推進しています。
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新奇な電子機能材料の開発

  我々のグループでは、透明導電体以外にも、磁性体や誘電体など、様々な電子機能材料の開発に取り組んでいます。ここでは、最近の研究成果のいくつかを紹介します。

磁性強誘電体の合成

  強磁性体や強誘電体は、外部から電場や磁場を印可していない状態でもマクロな磁化(自発磁化)や電気双極子(自発分極)を示すことから、記憶素子やスイッチなどのデバイス材料として重要な物質です。多くの物質では、磁気的な性質と誘電的な性質は独立で、磁場と電場によってそれぞれを制御する必要があります。ところが、磁気的な性質と誘電的な性質が強く結合した物質が存在することが報告されました。このような物質では、磁場による自発分極の制御や電場による自発磁化の制御(電気磁気効果)や、磁場による誘電率の制御(磁気誘電効果)が可能になることから、新たなデバイス材料として注目されています。

  我々のグループでは、このような材料の候補として、磁性元素を含む強誘電体の探索を行なっています。例えば、図1に示すのは、(110)-層状ペロブスカイト型Ln2Ti2O7という強誘電体です(Lnは希土類元素を表します)。希土類元素として、f電子をたくさん含むSmやGdを用いることで、磁気的な相互作用が期待できるのですが、パイロクロア構造という常誘電体が熱力学的により安定なので、(110)-層状ペロブスカイト型構造のGd2Ti2O7の特性は知られていませんでした。我々は、結晶構造が類似のペロブスカイト酸化物の単結晶基板を使うことで (110)-層状ペロブスカイト型Gd2Ti2O7の単層薄膜をエピタキシャル成長させることに成功しました。残念ながら、誘電的な性質と磁気的な性質の結合は非常に弱かったのですが、他の(110)-層状ペロブスカイト型Ln2Ti2O7と同様に室温で強誘電性を示すことを確認しました。

(図1) (110)-層状ペロブスカイト型Ln2Ti2O7の結晶構造と作製したエピタキシャル薄膜断面の透過電子顕微鏡写真型

酸窒化物のエピタキシャル成長と電子機能の探索

  ペロブスカイト型酸化物(一般式ABO3)は、SrTiO3などのワイドギャップ半導体やBaTiO3に代表される強誘電体、巨大磁気抵抗効果を示すMn酸化物など、極めて多彩な電子機能を示す物質群として盛んに研究が行われています。従来の研究の主流は、A、Bサイトの金属イオンに注目したもので、その組み合わせを変えたり、固体化学的手法を用いた元素置換によって物性制御を試みるものでした。これに対して、我々のグループでは、酸素サイトの一部を窒素で置換したペロブスカイト型酸窒化物(一般式 ABO2N、ABON2)に注目しました。ペロブスカイト型酸窒化物は、光触媒材料や有毒金属を含まない顔料材料としては、10年ほど前から盛んに研究が行われている物質です。電子機能に関しても、共有結合性の強い金属-窒素結合が物質中で配列することによる強誘電性の発現や、酸化物よりも浅い価電子準位に起因する可視光応答性といった、新たな機能が期待されています。

  一方で、ペロブスカイト型酸窒化物は、電子機能の評価に不可欠な単結晶や高密度焼結体の作製が難しいという問題があります。これは、単結晶や高密度焼結体の作製に必要な高温では試料が分解してしまうためです。このため、酸窒化物の電子機能は、ほとんど未開拓な状態にありました。そこで我々は、パルスレーザー堆積法を用いたエピタキシャル成長を使って様々な物質の高品質な薄膜結晶を直接作製し、新たな電子機能を探索しようとしています。これまでの研究成果として、代表的なペロブスカイト型酸窒化物の一つであるSrTaO2Nのエピタキシャル薄膜が強誘電性を示すことを発見しました(図2)。この物質は、バルク試料を用いた従来の研究では常誘電性のみが報告されており、強誘電性の起源に興味が持たれます。現在は、酸素と窒素の結晶内での長距離配列や単結晶基板からのエピタキシャル歪みなどに注目して研究を進めています。

(図2)(左)SrTaO2Nエピタキシャル薄膜の圧電応答顕微鏡(PFM)像(位相像)。導電性カンチレバーを使った分極処理によって、明瞭なドメイン構造が確認できることから、強誘電体であることがわかる。(右)SrTaO2Nエピタキシャル薄膜の圧電応答と電界の関係。強誘電性に対応するヒステリシスカーブが得られている。
右下は作成したSrTaO2N薄膜の写真(黄色いパターンの部分に薄膜が堆積されている)。

イノベーションセンター 研究支援グループ
TEL:044-819-2034 FAX:044-819-2026
研究推進グループ E-mail : res@newkast.or.jp

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