財団法人神奈川科学技術アカデミー

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戦略的研究シーズ育成事業

事業の目的とスキームの概要

(1) 事業目的

  戦略的研究シーズ育成事業は、KASTが地域の経済的価値(新産業・新事業)の創出や地域の社会的価値(クオリティー・オブ・ライフの向上等)の創出を目的として展開している有望シーズ展開プロジェクト(創造展開プロジェクト)等に発展するような研究シーズの育成を目的として実施する事業です。研究課題は公募により募集し、外部有識者およびKASTで採択課題を決定いたします。

(2) 事業スキームの概要

  本事業に採択された研究者は、採択された研究課題について、研究代表者が所属されている大学や研究機関において、KASTが雇用する研究員と共同し、KASTと連携しながら2年後に立ち上げる有望シーズ展開プロジェクト(創造展開プロジェクト)等へのステップアップを目指して事業を推進します。

平成27年度採択課題

採択課題名 研究機関 役職・研究者名
機能性ハプティックアクチュエータの創製 横浜国立大学大学院 工学研究院 准教授・下野誠通
高機能・高信頼性共発現エコマテリアルの創製 横浜国立大学大学院 環境情報研究院 教授・多々見純一
革新的巨大負熱膨張物質の創成 東京工業大学 応用セラミックス研究所 教授・東正樹
順不同

平成25年度採択課題

採択課題名 研究機関 役職・研究者名
輸血用自己血小板の新規安定供給システムの確立 慶應義塾大学 医学部 特任講師・松原由美子
高信頼性セラミックスエラボレーション 横浜国立大学大学院 環境情報研究院 教授・多々見純一
革新的パワーゲーティングによる超低消費電力回路・システムの開発 東京工業大学 像情報工学研究所 准教授・菅原 聡
順不同

平成23年度採択課題

採択課題名 研究機関 役職・研究者名
インフルエンザウイルスの創薬研究 横浜市立大学大学院 生命ナノシステム科学研究科 教授・朴 三用
「病態モデル細胞」創成と解析システム開発 東京大学大学院 総合文化研究科 教授・村田 昌之
高効率エネルギー変換型燃料電池の創生 東京工業大学 資源化学研究所 教授・山口 猛央
不揮発性メモリ素子/CMOS融合技術による低消費電力CMOSロジックシステム技術の創成 東京工業大学 像情報工学研究所 准教授・菅原 聡
順不同

機能性ハプティックアクチュエータの創製

横浜国立大学大学院 工学研究院
准教授・下野誠通
「次世代医療・福祉ロボットの実現に向けて、力触覚技術※1を応用した革新的アクチュエータ※2を開発します」

平成28年電気学会全国大会(3月16~18日)で、溝口貴弘研究員及び下野誠通PLらが研究成果の発表を行いました。
題目:「多極構造を有するクロスカップル形二自由度ダイレクトドライブモータの基礎解析」

  超高齢社会が加速する我が国では、QOL 向上に直接寄与する手術支援ロボット※3やリハビリテーションロボット※4など、国産の医療福祉ロボットの開発と実用化が望まれています。しかし、既存の医療福祉ロボットは本質的には工作機械や産業ロボットの延長に留まっており、人体を含む対象との柔らかい接触動作を実現することが困難であるため、適用可能な範囲が限定されています。本研究では、手術やリハビリテーションにおいて望まれる柔らかい運動を可能にする、力触覚技術を応用した様々なアクチュエータを開発します。また、他の研究機関や医療機関と連携して医療福祉ロボットの試作や臨床試験に臨み、将来的には国際競争力を有する神奈川発の次世代医療福祉ロボットの実現を目指します。

注釈

※1 力触覚技術:視覚、聴覚に続く新しい感覚技術。対象に力を伝えるとともに対象からの力を感じ取る(力覚を双方向に伝送させる)ことができる。
※2 アクチュエータ:入力されたエネルギーを機械・電気回路等により様々な運動(直線、回転など)に変換する駆動装置。
※3 手術支援ロボット:遠隔操作による低侵襲で精密な手術を可能にするロボット。
※4 リハビリテーションロボット:障害を持つ人のリハビリテーションを支援するロボット。
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高機能・高信頼性共発現エコマテリアル※5の創製

横浜国立大学大学院 環境情報研究院
教授・多々見純一
「高信頼性マテリアルデザインを確立し、高度ものづくりサイエンスを実現します」

  我が国のエネルギー政策の転換に向けた技術やシステムの向上は喫緊の課題ですが、これを支えるのはその基板となる革新的な材料であるといっても過言ではありません。本研究では、高機能・高信頼性を共発現する材料の創製を目指し、局所領域破壊特性※6のナノ・ミクロスケール計測技術および破壊シミュレーションを元に新規な材料設計手法を確立します。併せて、LEDや絶縁基板等の最終製品を意識した革新的材料の開発を行います。

注釈

※5 エコマテリアル:優れた 特性・機能を持ちながら、環境や人間への負荷がより少ない材料。
※6 局所領域破壊特性:材料の局所領域の破壊靭性や強度。本テーマでは提案者らが考案した、ほぼ全ての材料の破壊特性評価に適用可能な評価法を用いる。
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革新的巨大負熱膨張物質の創成

東京工業大学 応用セラミックス研究所
教授・東正樹
「加工性と機械的特性に優れた、新世代の巨大負熱膨張材料の実用化を目指します」

日本セラミックス協会 2016年年会(3月14~16日)で、酒井雄樹研究員及び東正樹研究代表者らが研究成果の発表を行いました。
題目:「Bi1-xSbxNiO3 のサイト間電荷移動誘起負熱膨張およびBサイト置換による効果」
「c/a が抑制されたペロブスカイト Bi2ZnTi1-xMnxO6 」
「ペロブスカイトPbCoO3のAサイトBサイト電荷秩序 」

  電子機器や光学機器等、複数の素材を組み合せるデバイスでは、熱膨張による位置ずれが問題になる他、各素材の熱膨張系数※7の違いが界面剥離※8や断線といった深刻な障害に繋がるため、多くの産業分野において熱膨張制御への強い要請があります。これに対し、これまでに熱膨張抑制を目的として様々な負熱膨張材料(温度が上がると縮む材料)の研究・開発が進められています。本研究では、新たなメカニズム(サイト間電荷移動)により従来の3倍近い負の熱膨張率を持つ第三世代負熱膨張材料※9を軸に、温度履歴※10を持たず広い温度範囲で巨大負熱膨張を実現する革新的な負熱膨張物質を開発します。また、産業化・実用化を目指して、従来の半分程度の圧力下での材料合成法や、負熱膨張物質の薄膜育成等にも取り組みます。

注釈

※7 熱膨張系数:温度変化に対して物質が膨張する割合。一般に、樹脂は金属やセラミックス等に比べて熱膨張系数が大きい。
※8 界面剥離:素材同士が接合面から剥がれること。
※9 第三世代負熱膨張材料:結晶構造や磁気体積効果に起因する従来の負熱膨張材料に対し、東教授が発見したサイト間電荷移動メカニズムにより高い負熱膨張効果を持つ材料を第三世代と呼ぶ。
※10 温度履歴:昇温過程と降温過程で物質の状態に違いが出ること。
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輸血用自己血小板の新規安定供給システムの確立

慶應義塾大学 医学部
特任講師・松原由美子
「医療現場において不足している輸血用血小板を安定供給できる新規技術を目指します」

  血小板輸血は、出血や抗がん剤使用時などで起こる血小板減少の唯一の治療法ですが、その血小板は善意の献血に100%依存しており、医療現場における不足が深刻な課題となっています。全ての細胞に分化できるiPS細胞※1から血小板を得る研究も精力的に実施されていますが、iPS細胞を経由する点で時間がかかる他、さらに目的の細胞へ分化させるには、まだ課題があります。

  本研究は、皮膚線維芽細胞※2を直接巨核球※3へ分化させ、そこから血小板を得ることに世界で初めて成功した技術を基に、少量の皮膚線維芽細胞から短期間で大量の血小板を作製するための効率的な培養方法や、巨核球から大量の血小板を得るための研究に注力します。

注釈

※1 iPS細胞:人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell)。さまざまな細胞への分化が可能な細胞で、再生医療・創薬への応用が期待されている。体細胞(皮膚組織のものなど)に特定の遺伝子を導入することでiPS細胞へと変化させることができる。
※2 線維芽細胞:皮膚の真皮(表皮の下にある層)に存在し、コラーゲンなどの繊維構造やヒアルロン酸などの保水成分を生み出す細胞。
※3 巨核球:骨髄の中に存在する造血系細胞。直径35~160μmと骨髄中最大の造血系細胞で、血小板を産出する。
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高信頼性セラミックスエラボレーション

横浜国立大学大学院 環境情報研究院
教授・多々見純一
「エネルギー分野において重要な基盤材料であるセラミックスの信頼性向上と高機能化を目指します」

 The International Symposium on the Science of Engineering Ceramics(EnCera2016)(5月9~11日)で、矢矧束穂計測センター職員及び多々見純一研究代表者らが研究成果の発表を行いました。
題目:「Mechanical properties of Si3N4ceramic surface in contact with molten Al evaluatedusing microcantilever beam specimens」
 粉体工学会第51回技術討論会(6月14 ~15日)で、高橋拓実研究員、矢矧束穂計測センター職員及び多々見純一研究代表者らが研究成果の発表を行いました。
題目:「マイクロカンチレバー試験片を用いたセラミックスとガラスのメソスケール破壊特性評価」

  セラミックスは、磁器やセメント、ガラスなど、我々に馴染み深いものから、電子・光学部品や医療用材料などの高機能なものまで、広い分野で用いられています。特にその耐熱性や放熱性に優れた特性から、燃料電池の多孔質体※1や、パワー半導体※2の放熱基板など、現在注目されているエネルギー分野においても非常に重要な基盤材料となっています。しかし、セラミックスは機械的強度の信頼性が極めて大きな課題として存在しています。

  本研究では、セラミックス粒界の破壊特性の実測とシミュレーションに基づく微構造設計および先進粉体プロセス※3を融合することで、機械的な信頼性が高い高機能セラミックス材料の開発を実現します。

注釈

※1 多孔質体:細かい孔が多数存在する構造体。なお、高温で稼働する固体酸化物形燃料電池の電極や電解質は、ジルコニア系などのセラミックスが用いられる。
※2 パワー半導体:モーター駆動やバッテリ充電など、電源(電力)の制御をおこなう半導体。大電圧・電流に耐えられ、放熱性の高いシリコンカーバイドなどが次世代のパワー半導体として期待されている。
※3 先進粉体プロセス:微細なビーズを用いナノ粒子を粉砕し、高分散化させるビーズミルや、高圧で対抗衝突させ均一分散させる湿式ジェットミルなど、研究代表者が精力的に進める粉体プロセス技術。セラミックスの原料となる無機材料粉末を細かく粉砕し、均一に分散させるなどの粉体プロセスは、高性能なセラミックスを作製する上で非常に重要な工程。
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革新的パワーゲーティングによる超低消費電力回路・システムの開発

東京工業大学 像情報工学研究所
准教授・菅原 聡
「次世代回路素子の融合により、IT機器の消費電力を大幅に削減する新しい集積回路技術を目指します」

  パソコンやスマートフォンの発展は目覚ましく、従来不可能だった高性能なアプリケーションが次々と実現し、現在の生活において不可欠なものとなりつつあります。これらは、小さな基板上に膨大な数のトランジスタ等の素子を集積できる、半導体微細加工技術の大きな発展により実現されています。しかし、微細化・集積化が進むにつれて、消費電力の増大が大きな問題になっております。

  本研究では、近年開発が急速に進んでいる抵抗変化型不揮発性メモリ素子※1などを用いて、集積回路への最適な組込み方法、回路設計を、シミュレーションおよび試作により検討・実証し、消費電力を大幅に削減する技術の実現を目指します。

注釈

※1 抵抗変化型不揮発性メモリ素子:強磁性体や金属酸化物を用いた2端子素子。電源を切っても情報を保持できる次 世代の不揮発性メモリとして開発が進んでいる。
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インフルエンザウイルスの創薬研究

横浜市立大学大学院 生命ナノシステム科学研究科
教授・朴 三用
「インフルエンザウイルスの変異に影響されないインフルエンザ薬の開発を目指します」

  現在、新型インフルエンザの大流行が懸念されていますが、インフルエンザウイルスは変異を起こしやすいため、次に大流行するインフルエンザに対し、現在の薬剤が有効であるかは不透明です。しかし、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼというタンパク質は、ウイルスが増殖して生存するのに不可欠で、ほとんど変異を起こさない部位です。このタンパク質の機能を阻害する薬剤ができれば、ウイルスの変異に影響されない治療薬となります。

  本研究では、RNAポリメラーゼ複合体の詳細な立体構造を基に、これらの作用を阻害する化合物の開発を通して、変異に影響されないインフルエンザに対する創薬開発を目指します。

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「病態モデル細胞」創成と解析システム開発

東京大学大学院 総合文化研究科
教授・村田 昌之
「病気に近い状態のモデル細胞を構築し、薬候補物質の効果・毒性等を調べられる手法の開発をおこないます」

  新薬開発では、候補となる化合物の効果や毒性などを、細胞を用いて解析・評価する試験(細胞アッセイ)がおこなわれます。多くの候補化合物を調べる中で、細胞アッセイは非常に重要ですが、従来は正常な細胞を用いておこなっているため、実際に病気になっている際の細胞の状態とは異なった環境下で候補化合物を調べていることになります。

  本研究では、細胞内のタンパク質等を調べられる細胞に病気組織等から採取した病態細胞の細胞質を導入することで「病態モデル細胞」を作成します。この細胞を用いて細胞アッセイをおこなうことで、より病態に近い環境下での各種細胞アッセイを可能にし、創薬開発に拍車がかかります。

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高効率エネルギー変換型燃料電池の創生

東京工業大学 資源化学研究所
教授・山口 猛央
「新たなエネルギー生成技術として、非常に効率の高い燃料電池の開発をおこないます」

  エネルギー技術は、現在、非常に注目されています。その中で、固体高分子形燃料電池は、常温から100℃で運転できる小型で軽量な発電デバイスで、家庭などで、必要な時に必要な量だけ発電可能です。しかし、現在の固体高分子形燃料電池の開発は、低価格化などに向いてしまい、本来の特徴である小型軽量で高い変換効率の実現に向けた研究があまり行われていません。

  本研究では、無加湿でも機能するナノ構造で制御した電解質膜と、高電位においても表面酸化されにくい白金複合体触媒を組み合わせることで、高効率な固体高分子型燃料電池の実現を目指します。

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不揮発性メモリ素子/CMOS融合技術による低消費電力CMOSロジックシステム技術の創成

東京工業大学 像情報工学研究所
准教授・菅原 聡
「IT機器における消費電力を大幅に削減する新しい集積回路技術の開発を行います」

  近年、IT機器による消費電力量は急激に増大し、今後、IT機器の省エネ化はこれまで以上に重要になってくると考えられます。特に最近のパソコン、サーバおよびスマートフォンのような携帯機器などでは、待機時の消費電力が非常に大きくなり重要な問題となっていますが、この待機時の消費電力は、従来の集積回路技術の延長では大きく削減することは難しいと考えられています。

  本研究では、従来のCMOSロジックでは用いられてこなかった不揮発性メモリ素子とCMOSロジックとの融合によって初めて実現できる不揮発性パワーゲーティングに関する集積回路技術を確立し、既存のシステムに適合し,待機時の消費電力を大幅に削減できる技術の開発を行います。

イノベーションセンター 研究支援グループ
TEL:044-819-2034 FAX:044-819-2026
研究推進グループ E-mail : res@newkast.or.jp

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