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人工細胞膜システムグループ

 膜タンパク質は、細胞表面の細胞膜において細胞内外への物質・エネルギー・情報の伝達というとても大切な役割を担っています。一方で、その機能不全は様々な疾患に発展するため、薬剤の重要な標的として考えられています。本プロジェクトでは将来の新薬開発の加速と病因究明に役立つ技術を生み出すべく、この膜タンパク質の機能を現在用いられている手法よりも高速に解析できるマイクロチップの研究・開発に取り組んでいます。

 MEMS2016(1月24~28日)で、井上晃佑、神谷厚輝、大﨑寿久、三木則尚、矢菅浩規、川野竜司研究員及び竹内昌治GLらが、研究成果の発表を行いました。
題目:「NON-SPHERICAL LIPOSOME FORMATION USING 3D-LASER-PRINTED MICRO CUBES」
「VIBRATION-TRIGGERED SELF-ASSEMBLY OF CAGED DROPLETS TO CONSTRUCT A DROPLET INTERFACE BILAYER NETWORK」

 神谷厚輝、大崎寿久研究員及び竹内昌治GLの総説が、「Electrocheistry(電気化学会誌)」に掲載されました。
タイトル:「人工細胞膜作製とシングルイオンチャネル計測」
 大崎寿久研究員及び竹内昌治GL らの研究成果が、「Analytical Cheistry」に掲載されました。
論文タイトル:「Integrated Microfluidic System for Size-Based Selection and Trapping of Giant Vesicle」


プロジェクトリーダー

プロジェクトリーダー 安田 賢二竹内昌治


東京大学教授

研究体制

期 間
2013年4月~
構 成

プロジェクトリーダー
サブリーダー
常勤研究員
非常勤研究員
研究補助員
事務補助員

実施場所
かながわサイエンスパーク(KSP)
神奈川県川崎市高津区
坂戸3-2-1 東棟3F

研究員一覧

研究概要 (H24年7月)pdfアイコン

   

研究状況(PDF 420KB)pdfアイコン

中間評価報告書

♠ 第1回中間評価 (PDF 65KB)pdfアイコン

研究概要

 膜タンパク質は生体内で重要な役割を担っており、その機能や特性を一つ一つ解明することが、基礎研究のみならず次世代の創薬・医療分野における重要な課題となってます。

 しかしながら、現在、水溶性タンパク質に比べ、膜タンパク質の研究は必ずしもめざましい進展を遂げているとはいえません。これは膜タンパク質が細胞膜中に存在するため、構造決定や機能解析が困難なためです。機能解析についていえば、現在は培養細胞に目的の膜タンパク質を多量発現させた実験系を用いることが一般的です。しかし、生細胞は培養中の汚染対策や個体差の均一化処理が煩雑であるほか、標的以外の雑多なタンパク質からの影響を受けるため、一つの標的タンパク質に限定した機能を探ることは困難でした。

 これに対して注目されているのが「人工脂質膜法」です。本方法は細胞膜のモデルとなる脂質二重膜を人工的に再構成した後、精製された膜タンパク質を導入することで、その膜タンパク質の特性を低ノイズで解析しようというものです。理想的な方法であるが、現状では基盤となる人工膜形成技術が再現性・安定性の面で発展途上にあり、それを専門とする研究者のみが利用できる技術にすぎませんでした。

 そこで本プロジェクトでは、微細加工技術(MEMS)を利用して、安定な脂質膜を効率良く再構成できるマイクロチップを開発し、膜タンパク質機能の高速解析処理を実現することを最終目標としています。具体的には、①人工平面膜の形成について再現性・安定性を高める技術とこれを集積化する技術、②膜タンパク質と膜との融合技術、③膜タンパク質の機能解析手法、を探索・開発してシステム化を行っていきます。また、これら革新的シーズ技術を創薬など産業界に展開していくことも目標としています。
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研究内容

❶ α-ヘモリシンのシグナル同時計測チップ
高分子フィルムのマイクロ孔をはさむように、微小なウェルとチャネルを有するマイクロチップをフォトリソグラフィー技術と光造形技術を組み合わせて作製しました。マイクロ孔に人工の平面脂質二重膜を形成し、膜タンパク質の一種であるα-ヘモリシンのシグナル同時計測を行うことに成功した。
研究業績:Anal Chem 2009掲載、MicroTAS 2008国際会議発表、ENS CachanとのJST戦略的国際科学技術協力推進事業成果
❷ パリレンナノポアを用いた脂質膜の安定形成
MEMS技術により、簡便にパリレンフィルムに400 nmのナノ孔を作製する手法を確立しました。このナノ孔に人工の平面脂質二重膜を形成し安定性を評価したところ、溶液の交換などに対する物理的安定性が向上し、また経時安定性も従来の数時間程度から約120時間に大幅に伸ばすことに成功しました。
研究業績:Small 2010 掲載、IEEE MEMS 2010 国際会議発表、特許出願中
膜タンパクチャネルとDNAアプタマーを用いたコカインの迅速検出
膜タンパクチャネルは生体由来の高感度・高精度センサとなる可能性があります。本研究では標的物質と特異的に複合体を形成するDNAアプタマーを膜タンパクチャネルにより高感度検出する技術を確立し、コカイン分子を米麻薬局の定めるカットオフ値300 ng/mLにおいて迅速に検出することに成功しました。
研究業績:J Am Chem Soc 2011 掲載、IEEE MEMS 2011 国際会議発表、特許出願中、新聞報道(日経新聞、日刊工業新聞)
マイクロ流路を用いた微細チャンバアレイへの脂質膜形成
側面に微細なチャンバが並んだマイクロ流路に、水溶液、脂質を分散させたヘキサデカン溶液、水溶液を順次導入することで、チャンバの入口に脂質膜を形成できるシステムを実現しました。チャンバ容量が少ないため、膜を通した物質輸送の顕微鏡観察に適しています。
研究業績:Lab Chip 2011掲載、IEEE MEMS 2008 国際会議口頭発表
脂質二重膜マイクロチャンバへの電極配線技術
上述の脂質膜マイクロチャンバシステムに対して、個々のチャンバに電極を配線しました。PDMS・ガラスデバイスの接着性を保つため、配線に電極パターンとブリッジ流路を設ける工夫を行いました。膜を通した物質輸送を、顕微鏡観察に加えて電気的計測によっても捉えることで、より多角的解析が可能になると考えられます。
研究業績:J MEMS 2011掲載、 電気学会誌E掲載、IEEE Transducers 2009 国際会議口頭発表
微小流路を用いたABCトランスポータ解析チップ
ABCトランスポータは薬剤の細胞内濃度を制御しているため、新薬候補との相互作用解析が求められています。本研究では微小流路中にhMDR1トランスポータ担持ベシクルを固定化し、定量的蛍光解析により輸送活性を評価する手法を開発しました。これにより単一トランスポータ当たりの輸送活性の評価に初めて成功し、アッセイ時間も大幅に短縮(3時間)しました。
研究業績:Lab Chip 採択、MicroTAS 2010、MicroTAS 2011、Biophys Soc 2012 国際会議発表、特許出願中
ABCトランスポータ解析チップ材料としてのパリレン被覆PDMS流路
微小流路材料PDMSは蛍光剤などの疎水性小分子を吸収するため、上述の研究においてトランスポータの定量的解析を困難なものにしていました。そこでPDMS表面にパリレン薄層を蒸着しこの問題を克服しました。これにより、ローダミンBの温度依存的な蛍光強度変化を定量的に解析することに成功しました。
研究業績:Sens. Actuators B 2010 掲載、MicroTAS 2010 国際会議発表、特許出願中
微小液滴アレイにおける無細胞タンパク質合成
脂質膜のコーティングにより吸着を抑制したマイクロ流路において、水溶液とヘキサデカンを流路に導入するのみで、均一な直径を持つ微小液滴を形成・アレイ化することに成功しました。微小液滴内において、無細胞合成系により緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現させ、その様子を経時観察しました。
研究業績:Anal Chem 2011掲載、MicroTAS 2009国際会議口頭発表、特許出願中
脂質膜マイクロチャンバを用いた均一かつ細胞サイズリポソームの形成
脂質膜マイクロチャンバシステムにおいて、チャンバの内側から溶液を押し出すことにより、均一直径の単層膜巨大リポソームを形成する技術を確立しました。また、リポソーム中において、無細胞タンパク質合成系によるGFP発現にも成功しました。
研究業績:Angew Chem 2009掲載、IEEE MEMS 2008 国際会議口頭発表
人工べん毛:2つのべん毛を修飾した微小物体の前進運動の解析
物体を動かすアクチュエータとして、クラミドモナス(単細胞べん毛虫)のべん毛を人工的に微小物体に修飾し、その前進運動について解析を行いました。べん毛の数が1本の場合は回転運動をする傾向が高かったが、2本にすることで前進運動となることが分かりました。
研究業績:Appl Phys Lett 2010掲載、IEEE Transducers 2009 国際会議口頭発表

イノベーションセンター 研究支援グループ
TEL:044-819-2034 FAX:044-819-2026
研究推進グループ E-mail : res@newkast.or.jp

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