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平成23年度KAST「戦略的研究シーズ育成事業」 4件を採択

 

財団法人神奈川科学技術アカデミー(KAST(カスト)、理事長:馬来義弘)は、科学技術活動を展開し、産学公連携の取組を通じて、地域経済の活性化と生活の質の向上に貢献することを目指しています。
KASTでは、平成23年度の新規事業として公募した『戦略的研究シーズ育成事業』の採択課題4件を決定したので発表致します。
本事業は、1件あたり年間1,300万円で、平成23年10月より開始します。


採択課題名 研究機関 役職・研究者名
インフルエンザウイルスの創薬研究 横浜市立大学大学院 生命ナノシステム科学研究科 教授・朴 三用
「病態モデル細胞」創成と解析システム開発 東京大学大学院 総合文化研究科 教授・村田 昌之
高効率エネルギー変換型燃料電池の創生 東京工業大学 資源化学研究所 教授・山口 猛央
不揮発性メモリ素子/CMOS融合技術による低消費電力CMOSロジックシステム技術の創成 東京工業大学 像情報工学研究所 准教授・菅原 聡
(順不同)
本事業は優れた研究シーズを発掘し、2年程度のシーズ育成期間を設け、研究成果の実用化推進を支援します。また、本事業終了後、特に優れた内容で進展が期待できる研究シーズについては、KASTが実施する大型の有望シーズ展開プロジェクトにステップアップする等、他の事業での展開を図ります。

研究内容の概要

1. インフルエンザウイルスの創薬研究

「インフルエンザウイルスの変異に影響されないインフルエンザ薬の開発を目指します」

現在、新型インフルエンザの大流行が懸念されていますが、インフルエンザウイルスは変異を起こしやすいため、次に大流行するインフルエンザに対し、現在の薬剤が有効であるかは不透明です。しかし、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼというタンパク質は、ウイルスが増殖して生存するのに不可欠で、ほとんど変異を起こさない部位です。このタンパク質の機能を阻害する薬剤ができれば、ウイルスの変異に影響されない治療薬となります。本研究では、RNAポリメラーゼ複合体の詳細な立体構造を基に、これらの作用を阻害する化合物の開発を通して、変異に影響されないインフルエンザに対する創薬開発を目指します。

2.「病態モデル細胞」創成と解析システム開発

「より病気に近い状態のモデル細胞を構築し、薬の候補物質の効果・毒性等を調べられる手法の開発をおこないます」

新薬開発では、候補となる化合物の効果や毒性などを、細胞を用いて解析・評価する試験(細胞アッセイ)がおこなわれます。多くの候補化合物を調べる中で、細胞アッセイは非常に重要ですが、従来は正常な細胞を用いておこなっているため、実際に病気になっている際の細胞の状態とは異なった環境下で候補化合物を調べていることになります。本研究では、細胞内のタンパク質等を調べられる細胞に病気組織等から採取した病態細胞の細胞質を導入することで「病態モデル細胞」を作成します。この細胞を用いて細胞アッセイをおこなうことで、より病態に近い環境下での各種細胞アッセイを可能にし、創薬開発に拍車がかかります

3.高効率エネルギー変換型燃料電池の創生

「新たなエネルギー生成技術として、非常に効率の高い燃料電池の開発をおこないます」

エネルギー技術は、現在、非常に注目されています。その中で、固体高分子形燃料電池※1は、常温から100℃で運転できる小型で軽量な発電デバイスで、家庭などで、必要な時に必要な量だけ発電可能です。しかし、現在の固体高分子形燃料電池の開発は、低価格化などに向いてしまい、本来の特徴である小型軽量で高い変換効率の実現に向けた研究があまり行われていません。本研究では、無加湿でも機能するナノ構造で制御した電解質膜と、高電位においても表面酸化されにくい白金複合体触媒を組み合わせることで、高効率な固体高分子型燃料電池の実現を目指します。

4.不揮発性メモリ素子/CMOS融合技術による
低消費電力CMOSロジックシステム※2技術の創成


「パソコンやモバイル等のIT機器における消費電力を大幅に削減する新しい集積回路技術の開発を行います」

近年、IT機器による消費電力量は急激に増大し、今後、IT機器の省エネ化はこれまで以上に重要になってくると考えられます。特に最近のパソコン、サーバおよびスマートフォンのような携帯機器などでは、待機時の消費電力が非常に大きくなり重要な問題となっていますが、この待機時の消費電力は、従来の集積回路技術の延長では大きく削減することは難しいと考えられています。本研究では、従来のCMOSロジックでは用いられてこなかった不揮発性メモリ素子※3とCMOSロジックとの融合によって初めて実現できる不揮発性パワーゲーティング※4に関する集積回路技術を確立し、既存のシステムに適合し,待機時の消費電力を大幅に削減できる技術の開発を行います。

【用語】
※1 燃料電池:燃料となるガス(主に水素)と酸素(空気)を供給し、燃料の酸化反応から直接電気エネルギーを取り出す一種の発電機。通常の電池と異なり燃料供給を続ければ発電を続ける。固体高分子形燃料電池は酸化反応で得られたイオンを導電させる電解質に固体高分子膜を用いたタイプの燃料電池。

※2 CMOSロジックシステム:CMOSによって構成された論理回路によるシステムの総称。パーソナルコンピュータやサーバのマイクロプロセッサや、携帯電話やスマートフォンのシステムオンチップ(SoC)はCMOSロジックシステムである。CMOSは、Complementary Metal Oxide Semiconductor(相補型金属酸化膜半導体)の略で、pチャネルMOSトランジスタとnチャネルMOSトランジスタから構成される基本ゲートやこれらから構成される集積回路の総称にも用いられる。

※3 不揮発性メモリ:電源を供給しなくても情報を保持することが可能なメモリの総称.これに対して電源を供給しなければ記憶を保持できないメモリを揮発性メモリという。USBメモリやデジタルカメラ等で使われるフラッシュメモリが不揮発性メモリの代表であるが、ここでは、より高速でデータの読み出し/読み書きが可能なReRAM(Resistive Random Access Memory)やMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)などの次世代の最先端不揮発性メモリを扱う。

※4 パワーゲーティング:CMOSロジックにおける待機時電力を削減する技術。ロジック回路を適宜分割して動作していない回路ブロックへの電源供給を遮断することで効果的にリーク電流を削減する。パワーゲーティングの高効率化ではロジック回路内の情報保持が重要な課題となる。不揮発性パワーゲーティングは本研究者らによってはじめて提案されたパワーゲーティング技術で、不揮発性メモリの機能を援用することで、エネルギーの削減効率の極めて高い理想的なパワーゲーティングを実現できる。

問い合わせ先

イノベーションセンター  研究支援グループ 渡部・遠藤
川崎市高津区坂戸3-2-1 KSP西棟6階
TEL 044-819-2034  FAX 044-819-2026  E-mail: res@newkast.or.jp

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