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透明で光るセラミックス!
高発光効率白色LEDへ。透明なサイアロン蛍光バルクセラミックス

公益財団法人神奈川科学技術アカデミー 横浜国立大学 神奈川県産業技術センター

ポイント

透明なサイアロン※1蛍光バルク※2セラミックスの作製に成功。
サイアロンの構造と組成を制御することで、高い透明性と鮮やかな発光を実現。
従来の白色LEDでは、粉体状の蛍光体を樹脂中に分散させて使用しているため、蛍光体と樹脂との屈折率差で散乱、および、光や熱による樹脂の劣化により発光効率が低下。
透明かつバルク状にすることで散乱を低減でき、従来の白色LEDに比べて高発光効率化が期待できる。
本成果は、日本セラミックス協会年会(平成26年3月17日~19日に慶応大学日吉キャンパスで開催)で発表。

平成26年3月12日 記者発表資料 828KB pdfアイコン

技術開発の概要

  神奈川科学技術アカデミー(略称:KAST(カスト))の戦略的研究シーズ育成事業において、多々見 純一(横浜国立大学教授、KAST研究代表者)、高橋 拓実(KAST研究員)は、横内 正洋(神奈川県産業技術センター主任研究員)と連携し、透明なサイアロン蛍光バルクセラミックスの開発に成功しました。
  今回開発に成功したポイントは、透明化を阻害する要因を原料組成と高緻密化焼結プロセス※3の最適化で低減したことにあります。開発された透明なサイアロン蛍光バルクセラミックスは白色LEDやディスプレー、センサなどへの応用が期待されます。
  特に、極めて高い透明性を示すα-サイアロンとともに、従来技術にはないβ-SiAlON透明体をベースとした緑色の発光効率のさらなる向上、結晶構造と添加元素の組み合わせによる新規赤色透明蛍光バルクセラミックスを目指して開発中であります。

開発の背景/従来技術との比較/産業への波及効果

  現在、主流の白色LEDは、紫外や青色LEDの上に粉体状の蛍光体を分散させた樹脂を塗布するという構造です。蛍光体には使用時に温度上昇しても消光しにくいサイアロンが多く用いられています。しかし、蛍光体と樹脂とで屈折率※4が異なることから、現在の方式では、樹脂内部で光が散乱してしまい、発光効率は低くなってしまいます。また、LEDの発光に伴って生じる光や熱により樹脂が劣化して使用とともに明るさが徐々に低下していくことが課題でした。
  このような問題を解決すべく、蛍光性を有する透明なサイアロンバルクセラミックスを作製しました。従来のサイアロンセラミックスは不透明で灰色から黒色を呈していました。この原因は、サイアロンセラミックス中に存在する気孔(粒子間の空隙)やガラス(サイアロン粒子間に存在。緻密化を促進するための添加物が残存したもの)による光の散乱と吸収です。我々は、これらを極力抑制するための添加物の選択と高緻密化する焼結プロセスの最適化をはかることで、透明性と蛍光性を併せ持つサイアロンバルクセラミックスを開発できました。従来のサイアロン蛍光体は粉体状であり、開発品のように透光性と蛍光性を兼ね備えたバルクセラミックスはほとんど報告がありません。
  今回の開発品が製品化できれば、従来方式の白色LEDの高効率化が期待できるだけでなく、ディスプレー、シンチレーター※5、レーザー等の光学機器として広く利用できる可能性があります。また、サイアロンは耐食性、耐熱性に非常に優れます。バルク状にすることで樹脂が不要になるので、従来品に比べて長寿命化、さらに高温下での利用も可能になり、応用の幅が広がります。また、セラミックスを作製する通常の粉体プロセスを基本としているので、形状、寸法などほとんど制約はなく、素形材として自由度の高い製品を提供できます。

今後の展開

  サイアロンは、その構造と組成を制御することで、様々な発光色を有する蛍光体になることが知られています。今回、青色や緑色で発光する透明サイアロンバルクセラミックスの作製に成功しているので、今後は赤色や黄色などに発光する様々な透明なサイアロン蛍光バルクセラミックスに展開するとともに、透明性を極限まで向上させることで幅広い需要に対応できるようにしたいと考えています。

用語

※1. サイアロン: 一般式Mx(Si,Al)y(N,O)zで表されるSi、Al、N、Oの固溶体です。Mは希土類元素、アルカリ土類金属元素などです。α-Si3N4をベースにした固溶体をα-サイアロン、β-Si3N4をベースにした固溶体をβ-サイアロンといいます。サイアロンに発光元素を添加すると蛍光体になります。たとえば、Y-αサイアロンにCeを添加すると青色発光、Ca-α サイアロンにEuを添加すると黄色発光、β-SiAlONにEuを添加すると緑色発光、CaSiAlN3にEuを添加すると赤色発光します。

※2. バルク:大きな塊状の物体のことです。薄膜や粉体の対義語で、ここでは従来の粉体状のセラミックス蛍光体に対して、原料粉体を焼き固めて作製したものを蛍光バルクセラミックスと呼んでいます。

※3. 高緻密化焼結プロセス: 熱間等方圧加圧法(Hot Isostatic Pressing:HIP)やホットプレスなど、高温高圧のガス中で緻密なセラミックスを製造する技術。特にHIP装置では、最大で大気圧の2000倍の圧力(200MPa)をかけることも出来ます。

※4. 屈折率:光が物質の中を進行する際の基本的な物理量。空気中の光の速度/物質中の光の速度で表されます。屈折率が異なる物質の境界では光の一部は反射し、残りは屈折します。反射の割合は二つの物質の屈折率の差が大きいほど大きく、物質が不透明になる要因の一つです。空気の屈折率は1、サイアロンは2、樹脂は1.6、ガラス1.7であり、屈折率は物質の種類により異なります。

※5. シンチレーター:放射線のエネルギーを吸収して発光する物質であり、可視光を電気信号に変換する装置と組み合わせることで、癌検査などに用いられる画像装置、手荷物検査機などのセキュリティー機器、文化財などの内部構造検査装置などに用いられています。

各法人について

  ・公益財団法人神奈川科学技術アカデミー HP: http://www.newkast.or.jp/
  ・横浜国立大学                 HP: http://www.ynu.ac.jp/
  ・神奈川県産業技術センター         HP: http://www.kanagawa-iri.go.jp/

お問い合わせ先

公益財団法人神奈川科学技術アカデミー  
研究支援グループ 大山、前川
川崎市高津区坂戸3-2-1 KSP西棟6階
TEL:044-819-2034  FAX:044-819-2026 
E-mail: ooyama@newkast.or.jp

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