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低炭素社会のためのキーマテリアルを開発!
パワーデバイスの実現を加速化。高熱伝導性窒化ケイ素セラミックス

公益財団法人神奈川科学技術アカデミー 横浜国立大学 長岡技術科学大学

ポイント

優れた機械的特性をもつ窒化ケイ素材料※1で、従来よりも高い149W/m・Kという高い熱伝導率※2を達成。
今回開発した窒化ケイ素セラミックスは、短時間の焼成(1900℃、6時間)で実現可能。(これまでに最も高い熱伝導率の窒化ケイ素セラミックス:長時間焼成(1900℃、60時間)の焼成が必要)
窒化ケイ素粒子を一つの方向にそろえることで、SiC等大電流パワーモジュールの絶縁基板で高い熱伝導性が求められる厚さ方向に対して高熱伝導率を実現。
本成果は、日本セラミックス協会年会(平成26年3月17日~19日に慶応大学日吉キャンパスで開催)で発表。

平成26年3月12日 記者発表資料 792KB pdfアイコン

技術開発の概要

  神奈川科学技術アカデミー(略称:KAST(カスト))の戦略的研究シーズ育成事業において、高橋 拓実(KAST研究員)、多々見 純一(横浜国立大学教授、KAST研究代表者)は、田中 諭(長岡科学技術大学、准教授)と連携し、高い熱伝導率をもつ窒化ケイ素セラミックスの開発に成功しました。
  今回開発に成功したのは、超伝導磁石を用いた「磁場配向技術※3」と、窒化ケイ素セラミックスの高緻密化焼結技術※4を組み合わせた新しいプロセスで実現可能となる、厚さ方向に高熱伝導率を示す窒化ケイ素セラミックスです。市販されている窒化ケイ素セラミックスの熱伝導率は85~95W/m・K程度(放熱基板用の窒化ケイ素セラミックスの場合)ですが、開発した窒化ケイ素セラミックスは従来品の約2倍に近い149W/m・Kという高い熱伝導率を達成しました。

開発の背景/従来技術との比較/産業への波及効果

  現在、主流の窒化アルミニウムは、非常に高い熱伝導率(単結晶に近い270W/m・Kも実現)を実現しています。しかし、高温で動作するSiC等のパワー半導体(炭化ケイ素SiCからなる、電力変換や制御を行う半導体)では、電極の銅の熱膨張率(熱によって長さや体積が変わる度合い)の違いから、窒化アルミニウムと銅の接合部を起点にして割れてしまい、壊れるという問題があります。
  このような問題を解決すべく、優れた機械的特性をもつ窒化ケイ素を材料とした、高熱伝導率セラミックスを作製しました。熱伝導性を向上させるためには、いくつかポイントが有ります。一つめは、熱の伝導を妨げる要因(粒子間の隙間である気孔や界面である粒界、結晶粒子中に取り込まれた酸素など)を取り除くということです。二つめは、窒化ケイ素の熱伝導性は結晶の方向で異なることを利用して、放熱方向に窒化ケイ素粒子の高い熱伝導性持つ方向をそろえるということです。本研究では、これらのポイントを同時に解決できる製造プロセスを検討することで、149W/m・Kという高い熱伝導率を発現する窒化ケイ素セラミックスの作製に成功しました。窒化ケイ素粒子をそろえる方法として、今回は磁力を利用したプロセスを選択しました。
  従来の窒化ケイ素セラミックスの熱伝導率は、多くは20~30W/m・K、放熱基板用でも、85~95W/m・Kでした。また、一般的な窒化アルミニウムの熱伝導率は150W/m・Kです。開発した窒化ケイ素セラミックスの熱伝導率149W/m・Kは、窒化アルミニウムとほぼ同等で、窒化ケイ素セラミックスの中では非常に優れているといえます。さらに、窒化ケイ素セラミックスの高熱伝導率化のためには、高温かつ長時間(現在世界最高値の熱伝導率をもつ窒化ケイ素セラミックスでは、1900℃で60時間)の焼成が必要でしたが、今回の開発品は1900℃で6時間の焼成で高い熱伝導率が達成可能であり、製造面でも実用化の可能性は高いといえます。今回開発した高熱伝導性窒化ケイ素セラミックスは、電気自動車をはじめあらゆる電気機器の電力変換素子として期待されているSiC等大電流パワーモジュールの放熱基板として利用されることが期待されます。

今後の展開

  現在、開発品の機械的特性について評価を行っており、今後は、高強度で長寿命な高熱伝導率窒化ケイ素セラミックスを実現するための微構造設計とプロセスの改良に尽力していきます。また、神奈川科学技術アカデミー、横浜国立大学などで行っているSiC等大電流パワーモジュール用実装材料開発・評価支援プロジェクト(KAMOME-PJ Ⅱ)とも連携して実用化を図っていきたいと考えています。

用語

※1. 窒化ケイ素: 化学式Si3N4で表されるセラミックス材料。結晶構造は六方晶系。α-Si3N4、β-Si3N4があり、βは高温で安定なので、窒化ケイ素セラミックスはβ-Si3N4と焼結助剤を含む粒界相で構成されています。Si3N4の熱伝導率の理論値は a軸 170W/m・K、c軸450W/m・Kで、c軸方向(図2で柱状粒子の伸長方向)に高い熱伝導率を示します

※2. 熱伝導率: 熱の伝わりやすさ。値が大きいほど、熱をよく伝えます。単位はW/m・K(ワットパーメートルケルビン)

※3. 磁場配向: 材料の磁気的な異方性を利用して配向させる技術。材料や製品の形状に依存しない点が大きな特長。鉄のような磁石につかない物質でも大きな磁場を作用させると磁石に反応して、粒子の向きを変えることができます。

※4. 窒化ケイ素セラミックスの高緻密化焼結技術: 窒化ケイ素は難焼結材料なので、焼結時に液相となる焼結助剤を添加しなければなりません。焼結助剤は、酸化イットリウムに代表される希土類酸化物や、酸化アルミニウム、酸化シリコンなど様々あり、目的とする用途に応じて、適切な焼結助剤を選択する必要があります。

各法人について

  ・公益財団法人神奈川科学技術アカデミー HP: http://www.newkast.or.jp/
  ・横浜国立大学                 HP: http://www.ynu.ac.jp/
  ・長岡技術科学大学           HP: http://www.nagaokaut.ac.jp/j/index.html

お問い合わせ先

公益財団法人神奈川科学技術アカデミー  
研究支援グループ 大山、前川
川崎市高津区坂戸3-2-1 KSP西棟6階
TEL:044-819-2034  FAX:044-819-2026 
E-mail: ooyama@newkast.or.jp

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