公益財団法人神奈川科学技術アカデミー

 ホーム記者発表一覧> インフルエンザ検出感度 従来法の1万倍!


インフルエンザ検出感度  従来法の1万倍!
~超高感度・簡便・迅速 イムノフルフローチップを開発~

公益財団法人神奈川科学技術アカデミー
株式会社 森永生科学研究所        

 公益財団法人神奈川科学技術アカデミー(神奈川県川崎市、理事長 馬来義弘)は、株式会社森永生科学研究所(神奈川県横浜市、代表取締役社長 小路正博)と共同で、検出時間10 分で従来法の1 万倍の感度で簡便にウイルスを検出できるイムノフルフローチップ(Immuno fluorescence controlled-flow chip; ImmunoFLflow chip)の開発に成功しました。

ポイント

従来法(イムノクロマト法)の1 万倍の感度、検出10 分のウイルス検査チップを開発
吸水性ポリマー利用によりチップ内部の検体の流れを制御し、蛍光検出法との組み合わせで高感度化
インフルエンザなど感染症発症初期の早期診断を可能にする小型・簡便・低コストツールとして期待

概 要

サンプル画像  インフルエンザの簡易迅速診断にはイムノクロマト法が広く利用されていますが、検出感度が十分でないため、発症初期の少ないウイルスを正確に検出することは困難です。一方で、抗ウイルス薬は、発症後48 時間以内に投与する必要があるため、小児や高齢者に多いインフルエンザ合併症による重篤化を防ぐためにも可能な限りの早期診断と早期治療が求められます。
 
  当財団竹内グループ(グループリーダー 竹内昌治)は、株式会社森永生科学研究所と共同で、検出時間10 分で従来法の1 万倍の感度で簡便にウイルスを検出できるイムノフルフローチップの開発に成功しました。
  本チップは、これまで困難であった感染症発症初期(~12 時間、発熱後の早い段階)の早期診断をこれまでと同じく簡便な操作で可能にし、上述の合併症等による重篤化および季節性や新型インフルエンザの感染拡大防止に貢献できると考えます。将来的には、迅速検査が求められるウイルスや菌の検査への活用も期待されます。今後は製販企業を募り、本チップの実用・量産化を目指します。

 

発表内容

<研究の背景>
  インフルエンザの簡易迅速診断にはイムノクロマト法が広く利用されており、15 分程度でその場で診断結果を知ることができます。しかし、検出感度が十分でないため、発症初期の少ないウイルスを検出することは難しく、罹患していても偽陰性となる例が全体の3~4 割存在するといわれています。抗ウイルス薬は、発症後48 時間以内に投与する必要があるため、小児や高齢者に多いインフルエンザ合併症による重篤化を防ぐためにも可能な限りの早期診断と早期治療が求められます。
  公益財団法人神奈川科学技術アカデミーと株式会社森永生科学研究所は、μTAS(Micro-Total Analysis Systems)技術注①と免疫測定技術注②という双方の独自技術を融合させ、イムノクロマト法のような簡便な操作でかつ高感度、迅速診断が可能な免疫測定チップの研究開発を進めてきました。

<研究の成果>
  公益財団法人神奈川科学技術アカデミー竹内グループ(神奈川県川崎市、グループリーダー 竹内昌冶)は、株式会社森永生科学研究所(神奈川県横浜市、代表取締役社長 小路正博)と共同で、検出時間10 分 で従来法の1 万倍の感度で簡便にウイルスを検出できるイムノフルフローチップ(Immuno fluorescence controlled-flow chip; ImmunoFLflow chip)の開発に成功しました。
  現在、イムノクロマト法は簡単な操作でその場で短時間に判定できるため、インフルエンザなど、免疫測定分野の簡易迅速診断に最も広く利用されています。しかし、感度および精度が十分ではないため、定性的 な注③簡易判定しかできません。イムノクロマト法では毛細管現象注④を利用して検体を流しながら抗原抗体反応注②を行いますが、流れが不均一になりやすく、抗原(例えばインフルエンザウイルス)と標識試薬の反応をうまく制御できないため、結果に誤差が生じることが要因でした。
  イムノフルフローチップでは、吸水性ポリマーの吸水現象を駆動力とすることで、抗原と未反応の蛍光標識試薬をしっかりと分離することに成功し、イムノクロマト法の1 万倍という超高感度化を実現しました。イムノフルフローチップは、透明プラスチックとファイバーシートを材料とする低コストの使い捨てチップです。操作法はイムノクロマト法と同様に検体を滴下するのみで、小型蛍光リーダにより客観的数値にもとづき検査する ことができます(図1)。不活化インフルエンザウイルス抗原を利用した比較(図2)では、イムノクロマト法の検出限界が100 倍希釈程度であるのに対して、イムノフルフローチップは100 万倍希釈まで検出できていることがわかります。

 
図1  イムノフルフローチップにおけるウイルスの検出機構.検体滴下位置に検体を滴下すると、吸水性ポリマーの働きにより検体は写真右手へと流れに乗って移動します。検体中のウイルスは、蛍光標識抗ウイルス抗体とともに検出部に配置された抗ウイルス抗体固定化ビーズに結合・捕捉されます。結合しなかった過剰な蛍光標識抗体は洗浄液と共に下流(写真右手)へ流されます。この機構により、検出部ではウイルス量に応じた蛍光を観測することができます。
 
図2  不活化インフルエンザウイルス抗原(1mg/mL Influenza A protein : A/New Caledonia/20/99(H1N1))の希釈液を 市販のイムノクロマト法(上:目視判定)およびイムノフルフローチップ(下:市販の小型蛍光リーダで判定)で検査した結果。市販のイムノクロマト法では100 倍希釈が検出限界だが、イムノフルフローチップでは100 万倍希釈まで検出できた(1 万倍の高感度化)。

 

<社会に対する成果の還元、今後の展望>
  小児や高齢者は、インフルエンザにより脳症や肺炎などの合併症が生じることで重篤化しやすく、抗ウイルス薬は発症後48 時間以内に投与する必要があるため、可能な限りの早期診断と早期治療が求められま す。イムノクロマト法は、操作が簡便であるというメリットがある一方で、検出感度と精度が十分とは言えず、感染症発症初期の少ないウイルスは検出できず、発症後24 時間以上経たないと正確な診断ができないという課題があります。イムノフルフローチップは、これまで困難であった感染症発症初期(~12 時間、発熱後の早い段階)の早期診断をこれまでと同じく簡便な操作で可能にし、上述の合併症等による重篤化および季節性・新型インフルエンザの感染拡大防止に貢献できると考えます。将来的には、迅速検査が求められるインフルエンザ以外のウイルスや菌の検査への活用も期待されます。

用語

注① μTAS: MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて、チップ上に微小な流路や反応室、混合室を設け、一つのチップもしくはデバイスで血液やDNA をはじめさまざまな液体や気体を分析する生化学分析デバイスのことです。
注② 免疫測定: 抗体は、抗原となる特定のタンパク質や病原菌等の物質に結合する性質があります。免疫測定では、測定したい抗原に特異的な抗体によって、血液や尿等のサンプルから、その中に含まれる抗原を検出し、検査・診断を行います。
注③ 定性分析: 検体中の標的となる抗原の「あり」「なし」のみを判定します。定量分析では、「あり」「なし」だけでなく、検体中の抗原量を決定できます。
注④ 毛細管現象: シート内の繊維と繊維の間のような微小空間を、液体の付着力と表面張力の作用により、重力に関係なく液体が浸透していく現象のことです。

お問い合わせ先

公益財団法人 神奈川科学技術アカデミー 地域連携コーディネーター  早川
川崎市高津区坂戸3-2-1
TEL: 044-819-2310 FAX: 044-819-2312 Email: CD@newkast.or.jp
 
 前のページへ戻る    ページのトップへ戻る